応用衛星リモートセンシング技術による国際連携始まる:JSPS研究拠点形成事業「衛星リモートセンシングによる防災・環境に関する東南アジア研究・教育拠点の構築」

 創成科学研究科の清水則一教授(応用衛星リモートセンシングセンター副センター長)は,本学が推進するJSPS研究拠点形成事業「衛星リモートセンシングによる防災・環境に関する東南アジア研究・教育拠点の構築」(27-29年度)の一環で平成29年3月20-25日の間,インドネシアを訪れ,2つの大学の3つの研究グループと研究セミナーと講義を実施するとともに,今後の連携との拠点形成に関する打合せを行った.
 まず,21日にバンドン工科大学(Institut Teknologi Bandung, ITB)の地球科学技術学部の測地研究グループのAndreas教授,Gumilar博士ら5名と衛星リモートセンシング技術を用いた広域地盤沈下監視について研究セミナーを行った.セミナーでは,まず,清水教授が提案する宇宙技術(GPS:人工衛星測位システム,SAR:合成開口レーダ)を用いた時空間連続地盤変位計測のコンセプトと適用事例について説明した.続いて,本学大学院学生のEdi Yastika君からインドネシアのスマラン市の広域地盤沈下のInSAR(干渉SAR)による解析・計測結果を示した.ITB側からは,Andreas教授らがスマラン市における地盤沈下をGPSによって長年にわたり計測している結果の説明があった.事前にGumilar博士から計測データの提供を受け,われわれの解析結果との比較を行っていたので,その妥当性や最新の計測結果について議論できた.相互の成果と研究の特徴を理解し,今後の協力・連携することを確認した.
次いで,22日に,同じくITBの資源・石油工学のWattimena教授が率いる鉱山開発研究グループ,および,関係する鉱山技術者による研究セミナーを行い,約30名参加した.ここでは,広大な露天鉱山の長大斜面の安全監視に的を絞り,清水教授らのGPSによる高精度自動変位計測システムと逆解析を活用した斜面のリスク管理手法の説明と具体的な適用事例を示すとともに,本学大学院学生のSudi Parwata君から,インドネシアの鉱山を対象としたInSARによる変位監視事例を紹介した.一方,インドネシア側からは,地表レーダによる安全監視の実際について説明があった.両者の方法は,斜面の安全監視の向上において相補う関係にあり,今後,インドネシアの鉱山をモデルケースとして取り上げ共同研究を始めることになった.
23日は,バンドン市からスマラン市に移動して,ディポネグロ大学(Universitas Diponegoro, UNDIP)の測地工学科のSubiyanto専攻科長,Awaluddin教授らと宇宙技術による地表観測に関する意見交換を行い,その後,教員と学生に対して,「宇宙技術を活用した地盤変位計測」の講義を行った.講義には120名を超える学部学生が集まり,教室は立ち見や通路に座る学生もいて超満員であった.出席した学生は学部生であったので,適用事例を豊富に示し(斜面監視,地盤沈下,火山活動,地震による地盤変動など)同行したSudi, Edi両君と共に分かりやすく説明した.約1時間の講義に対して30分以上にわたる熱心な質問があった.講義も質疑も英語でおこなった.
翌24日は,スマラン市の地盤沈下について調査した.上述のように, 山口大学ではInSARによってスマラン市の長期にわたる広域的な地盤沈下を解析し,ITBグループから提供を受けたGPS計測結果と比較して妥当性を検証している.現地調査は,InSARの実務適用の検証のためにも重要である.UNDIPから派遣された2人の大学院生の案内によって,地盤沈下の激しい地域と市全域にわたるGPS計測点を視察した.長期にわたる沈下により,家屋が地面に埋没し,崩壊は免れているものの住まいとして放棄されているケースもあった.一方では,今なお居住されている地域もあり,実態を明らかにして関係機関に報告し改善を求めることが喫緊の課題と思われた.そのためにも,今後,ITB,UNDIP,ならびに,山口大学が協力して地盤沈下観測を継続することが重要であり,3者連携することを確認した.
今回の研究セミナー,講義,現地調査実施にあたっては,山口大学と昨年MOUを結んだインドネシアBIG(国土地理院)のAbidin長官,山口大学オフィスのあるウダヤナ大学の大澤先生(山口大学特任教授)らのご支援を得た.また,このたびの説明や調査に用いた研究成果の一部はJAXAから提供を受けたSARデータによって得られたものである.関係者各位に謝意を表する.

 
ITB測地研究グループ教員との熱を帯びる議論.左からDr. Sizug, Dr. Gumilar,Prof. Andreas, Dr. Pradipta, 清水,Edi(山口大大学院学生)(撮影: Sudi(山口大大学院学生))


ITB鉱山開発研究グループとのセミナー参加者.中央着席左からRidho Wattimena教授,清水教授,Budi Sulistianto教授(山口大学大学院1999年博士取得)

 
1階部分が沈下し水没した家屋


GPS計測点


古い記事へ新しい記事へ
 トピックス一覧へ 
 
Copyright©2003-2016 Division of Rock Mechanics and Rock Engineering Yamaguchi University.All rights reserved..